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Column

[2020.01.29] 『KAMI CHARISMA カミカリスマ』への違和感

 2020年1月28日、日本時間早朝。フランスの権威あるグルメガイド誌ミシュランガイドの2020年度版において、日本人オーナーシェフ小林圭氏が営むフレンチレストラン「ケイ」がなんと三ツ星を獲得したことが発表された。もちろん、三ツ星の獲得は、日本人シェフとして初の快挙であり、多くの料理関係者や食の愛好家達を驚かせるビックニュースとなり、私自身も大変な驚きをもってそのニュースを受け止めたひとりである。

 

 パリ万博が催された1900年以来、自動車旅行の際に役立つガイドブックとして創刊されたミシュランガイドは、創刊以来、フランスで最も権威のあるグルメガイドブックとされ、昨年放送されたTBSテレビドラマ日曜劇場『グランメゾン』の中でも強調されたように、料理人にとってミシュランガイドの星を獲得することは、大変な名誉であり、その影響力はレストランの売り上げへも相当な影響力を及ぼすと言われている。実際に、ミシュランの本国フランスでは、星の格下げを悲観したシェフの自殺や、精神不安定となったシェフによる訴訟問題などが話題となり、ミシュランの在り方は社会問題となっていると言っても過言ではない。

 

 私自身、昨年11月に渡仏した際、ヤニックアレノ氏の三ツ星レストラン「ALLENO PARIS」や「HOTEL Le Meurice」を訪れたときの感動は、東京の高級レストランで味わうものとは別格で、特別な体験であった。フランスは人口約6000万人に対し、その1.5倍の年間9000万人が訪れる世界一の観光立国である。皿の上のクオリティはもちろん、歴史的建造物内に構える豪華な内装や外観、サービスに従事する人々の数の多さや質の高さ、多様な言語に対応する能力と人種への理解。そして、高額な価格設定にも関わらず、世界中のセレブリティを魅了してやまないのがフランスを観光立国たらしめる所以であろう。自動車旅行のガイドブックとして創刊されたミシュランは、世紀を跨ぎ、今では飛行機に乗って世界中から観光客を集める際のひとつの指標となっている。その中での日本人シェフによる三ツ星の獲得は、大変な名誉と共に、星を維持しなければという想像を絶するプレッシャーが同居することとなり、相当な緊張感を伴うだろう。つまり、観光立国を目指すと言うのは、大変な覚悟が必要なのだ。

 

 他方、日本の置かれている状況はどうであろうか。日本は、人口約1億2000万人に対し、訪れる年間観光客数は3000万人であり、人口の約3割に過ぎない。世界の中では11位、アジアの中では中国、トルコ、タイに次ぐ4位という位置付けである。国際語学教育機関の英語力調査ランキングによると世界53位、アジアの中でも、シンガポール、フィリピン、マレーシア、香港、韓国、中国よりも劣っており、ずば抜けて低い。

 

 2019年12月に創刊された『KAMI CHARISMA カミカリスマ東京 2020』は、WWD2019年12月9日付の記事によると「フランスのミシュランガイドをまねた」らしく、インバウンドの訪日アップを狙い、厚生労働省、国土交通省官公庁、日本政府観光局などが後援しているそうだ(ちなみに韓国版ミシュランガイドは、韓国政府機関がミシュラン側に金銭を支払って誘致したことが噂され、評価の公平・透明性が揺らいでいる)。美容に携わり、フランス文化に関心がある私には、どうもカミカリスマを巡る一連の動きに違和感を覚えざるを得ない。日本は、本当に観光立国を目指す覚悟があるのだろうか。多くの訪日観光客が予想される東京オリンピックが、歴史の徒花とならぬことを願いたい。