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COLUMN

化粧品展、視察から感じた事

 2020年1月20日から22日の3日間にかけて千葉の幕張メッセにて催された国際化粧品&化粧品開発展(以下、化粧品展)へ今年も視察へ訪れた。化粧品原料、容器、物流、販促など化粧品ビジネスに関わる様々な企業が国内外問わず出展し、商談を行うBtoBの展示会である。

 

 年始の化粧品展を皮切りに、年に3.4回ほど美容関係の展示会を訪れているが、私の主たる視察目的は、新規の取引先を探すことは当然のこと、それ以外に美容ビジネスの大きな潮流を掴むという部分にある。テレビや美容雑誌、インターネットから発信される美容情報には、様々なバイアスがあり、それだけを追いかけていても、本当の意味で美容ビジネスの本質を捉えることは困難である。BtoBの商談会である展示会(BtoBというのは建前で、かなり多くの一般消費者が来場者に紛れ込んでおり、卸値からさらに割引された価格で取引が成立する大バーゲン会という側面も否めないが・・・。)は、直接、美容メーカーや原料メーカーから、商材に対するこだわりや、競合他社商品との品質の違い等の主張を伺う機会があり、現場の声から、美容ビジネスのトレンドを掴むことができる貴重な機会なのである。

 

 年によって、流行する事象は様々であり、韓国コスメのカタツムリパックや毒蛇パックが流行した時期もあれば、炭酸美容から水素美容、ノンシリコーンやオーガニック化粧品、痩身、リフトアップ、デトックス、ファスティング、炭水化物ダイエットなど、美容にまつわる言説の変化は、実に目まぐるしいものである。近年では、幹細胞コスメが何かと話題であり、その由来原料も多岐に渡る。

 

 元来、美容商材は薬機法によって効果・効能の範囲が定義されており、美容商材は主に「化粧品」に分類され、医師や薬剤師による指導・助言が必要な「医薬品」、「医薬部外品」とは違い、効果や効能を大々的に謳うことができない分野である。一般的に、効果については「化粧品」<「医薬部外品」<「医薬品」ということになり、安全性については副作用の影響などを考慮すると「化粧品」>「医薬部外品」>「医薬品」と分類して相違ないところであろう。

 

 ところが、展示会を視察していると化粧品や美容技術であるにも関わらず、限りなく効果・効能を強調するような表現に近い宣伝文句が横行していると感じることが多い。年を追い、「ビファア」「アフター」の写真による掲示が不可となるなど、対策も講じられているがどうもイタチごっこと言った印象である。もっとも、美容メーカー側の言い分としては、申請までの費用や期間を考慮し、あえて「化粧品」として申請しているだけで、効果・効能を薬機法上謳えないけど、効果は「ある」と主張したいという想いも一理あると言える。また、「血液クレンジング」にまつわる施術が話題となったように、医療機関が提供する施術の中にも、その効果に大きな疑問を持たざるを得ないものも多い。

 

 再確認しておきたいのは、私たちのように一般消費者に一番近い立ち位置で、商品や施術を提供する立場にある者は、自らが発する言動に責任と矜持を持ち、「売れれば何でも良い」といった類の価値観へは一定の距離を保ち、正しく美容情報を疑い、本質に迫る営為の重要性である。膨大な情報が溢れかえる中、安心・安全で、尚且つ品質の高い美容の価値を発信していくことが、日本の美容の最大の強みであるということを軽視してはならない。不況が長引き、混迷を極める経済状況の中、マックスウェーバーが予見した「精神のない専門人」と「心情のない享楽人」が跋扈する美容産業であってはならない。

 

 定点観測のように毎年様々な展示会を視察し、私が感じていることが、ただの杞憂に終わることを望みたい。