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Column

[2020.06.17] 『坂の上の雲』との不思議な巡り合わせ 3

 NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』は、2009年~2011年の12月に足掛け3年1部〜3部に分けて放送された大作ドラマである(1部のみ11月に1回放送)。1回を90分枠とし、計13回で構成されるこの長編ドラマは、小説のスケールを進化した映像編集技術で見事に再現し、実力者連なる俳優・スタッフ陣で丁寧に描き、小説と比べても色褪せることない完成度を誇る名作である。小説『坂の上の雲』が産経新聞に連載されていたのは、1968年から1972年であるから、小説終了から映像化まで実に37年を費やしたことになる。司馬氏は、何度も映像化の話を打診されたらしいが、その度に断り続けていたと言われていたことは、私が学生であった頃から有名な話であったので、2003年に映像化の話が発表された時に感じた驚きと喜びを、当時アルバイトをしていた喫茶店でオーナーと語り合ったことを記憶している。まさかその15年後、『坂の上の雲』の登場人物が多く眠る青山霊園の目の前で働くことになるとは、なんという奇縁であろうか。今回のコロナ自粛の思いがけぬ時間を利用して、改めてドラマ『坂の上の雲』を見返すこととなった。

 

 歴史ドラマの醍醐味は、「余情」にあると言っても過言ではない。「余情」とは、ワインにおける余韻に例えるとわかり易いかもしれないが、鑑賞後にもずっと心に長く残る味わい深さのようなものである。『坂の上の雲』はあくまでも「歴史小説」という創作物であり、そのまま「歴史」の史実として捉えることには慎重でなければならないが、1話90分の計13話という大作だけあって、ドラマで描き切れなかった部分を調べ、著者である司馬氏がどのような想いを込めて執筆したのかと思索に耽ることは、とりわけ歴史を題材にする創作物の醍醐味であると個人的に感じている。その意味において、ドラマ『坂の上の雲』は、ボルドーワインのグランヴァン(偉大なワイン)の熟成ワインと言ったところだ。私は、この思いもよらなかった自粛期間を利用して、再度、長い熟成を経た『坂の上の雲』に向き合い、その余情を味わうこととなった。

 

 さらに、不思議な巡り合わせは続いた。美容師という職業は、実に多くの不思議な出会いをもたらす特殊な職業である。青山霊園の周辺には、墓地設立以来から約150年に渡り営まれている花屋さんや石屋さんなどが多く存在している。青山霊園の前にサロンを移転して丸2年が経過したこともあり、ご近所からサロンにご来店頂くことも増えてきた。その中で私が担当させていただくお客様の中で、『坂の上の雲』にゆかりのある人物のお墓の管理をされているという方から多くのエピソードを伺う機会を得る事ができた。このことも、私にとって望外の喜びとなった―。